美々のお話


まえがき


こんにちは。美々は家で飼っている猫です。 私達と一緒にカリフォルニア州サンタクルーズにて 暮らす様になってかれこれ5年余りになります。 美々が家へ来た時は生後6ヶ月程度でした。 美々が語る「私のライフストーリー」をお楽しみ下さい。

目次

  • モーテル
  • 弁護士事務所
  • Campbellの家 I
  • Campbellの家 II
  • 我家はSanta Cruz

  • モーテル お母さんについて覚えている事は「ふみふみ」しながら おっぱい飲んでいた時の幸せ…。 それから見知らぬ人に 拾われたらしく、安っぽいモーテルで暮らしていた。 そこは 1ヶ月分の家賃の支払さえ出来ない人が住んでいたモーテルで 観光地のモーテルなんかとは全く違った。 生活臭溢れたモーテルだった。 その安モーテルでの暮らしは数ヶ月で終わり。 ぼろモーテルの 経営が成り立たなくなり、破産してしまったのだった。 私を拾ってくれた 人を始めそのモーテルの住人、滞在者は全て立ち退きとなった。 今となっては名前も顔も覚えていない私の同居人は首に電話のコードを 巻いて私を部屋から出られなくして、去って行ってしまった。 誰も居ないボロモーテルの一室にぽつりと残されてしまった。 「心細いやんかぁ…。」
    弁護士事務所 1人ぼっちになってがっくりしていたら、ドアが開いた。 「同居人よ、帰って来てくれたんかぁ。」と言ったら全然知らない ネクタイを締めた小奇麗なオジサンが立っていた。「 Look, here is a kitten! We cannot leave him here. 」 「him」とは何たる事。私は女の子である。そうこう思っている間にオジサンは私を箱の中に入れて知らない所に連れていったのである。 箱から出ると、そこは法律書もつが沢山ある弁護士事務所であった。 「何じゃ、ここ。おっきな本箱がギョウサンあっておっそろしぃ〜。」私はパニック状態になって一目散に 開いていた窓から飛び出し、側にあった木に駆け登った。この頃は体重もかなり軽かったので 容易にかなり高い所まで登る事ができた。オジサンは私の後を追って外に出てきた。勿論窓からではなく ドアから出てきた。窓はこのオジサンの運動神経と体型の双方に合わない。オジサンは高く登った 私の方に向かって大声で、「Kiiiiitty, kitty, kitty! Get down here, kitty kitty!」と呼んだ。 実はこのオジサンはこの弁護士事務所の弁護士であった。 クライアントのモーテルが 破産宣告を受けたので、書類手続等で各部屋をチェックする為に例のボロモーテルに来ていたのだった。 「きさくな弁護士のおっちゃんやなぁ。ここにいててもしゃないし…。」 パニック状態のおさまった私は彼のもとに降りていく事にした。そしたら又箱の中に入れられてしまった。 このオジサンの名前はジョーという。ジョーは奥さんに電話して私の事を話していた。しばらくすると 又箱ごと車で何処かに連れて行かれた。
    Campbellの家 I 又箱が開いた。 開いたと思ったら、人間の手が入ってきた。 なんだか私の好みの匂いのする手だったのとその匂いで今までの 緊張が少し緩和されたのが手伝って喉がゴロゴロなった。箱をそ〜っと出ると、 そこには小さなシングルベットが1つあった。 箱から出るやいなや、女の人に 抱きしめられた。それが現在のママである。ママはこの時まだ独身で学生だったようで、 ジョーと奥さんのシンディ宅に居候していたのだった。その部屋にはママ以外にも ジョー、シンディ、彼らの娘アリソンがいた。皆にこにこして私の事を迎えてくれた。 シンディがご飯とお水を用意してくれた。何だか、ここが好きになりそうだ。 緊張がほぐれたら無性に腹が減ったのでムシャムシャご飯を食べだした。
    Campbellの家 II 私の生活場所は独身時代にママが間借りしていた部屋であった。 トイレは部屋の隅に、ご飯とお水は別の隅にあった。以前私には 前の同居人がつけた名前があったと思うが、この頃、私は 美々と呼ばれる様になった。ママが子供の頃妹の様にして飼っていた 猫と同じ名前らしい。 夜はママと小さなベットで 一緒に寝た。家族がかわりがわりに 「美々〜。」と私に会いに来た。 この家にはすでに猫2匹と犬が1匹いたが、新入りの私は皆にとても 可愛がられた。可愛がられると、昔お母さんから「フミフミ」して貰ったおっぱい の事を思い出した。 おっぱいを思い出したら、知らずに又「フミフミ」していた。 私に会いにきてくれる人の頭に「フミフミ」した。そしたら余計可愛がられた。 「幸せやなぁ〜。」とかみしめていたら、又箱に入れられて何処かに連れて行かれた。 「出してぇなぁ〜!」車の中で必死に抵抗した。運転しているのはママだった。 騒ぎ倒したので箱から出して貰った。ママの膝の上で丸くなっている事にした。
    我家はSanta Cruz 30分程のドライブの後、車から降りると海の匂いがした。Santa Cruzであった。私はまだ一度も海を実際に 見た事がない。いま思えば好物のかつおぶしに似た匂いがしていたのだ。 今まで小さな1部屋の中が私の生活場所だったのが、この日から2LDKの一件家が全て私の 生活場所となった。いきなり広くなって恐かったので、しばらくクローゼットの中に潜む事にした。 私のSanta Cruzでの生活が始まった。 このSanta Cruzの家はママのその時のボーイフレンド、リックの借家であった。 1ヶ月後ママがリックの妻として引っ越ししてきた。そしてリックが同居人でなくパパになった。 こうして私には現在も愛してくれている両親が出来た。リックは短気だけど、意地悪な鳥や近所の 恐い猫から守ってくれる、頼りがいがあるパパだ。その後Santa Cruz内で 2度引越しし、現在は大きなマイホームに住んでいる。 勿論、この家そして裏庭に両横庭がすべて 私の生活場所である。階段の上から2段目に寝転んで、皆を見下ろすのが好きである。 「フミフミ」は今もパパとママの間に挟まって寝る前の日課である。

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